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第17回全国小・中学筝曲コンクール in 宇部 [コンクール情報]

「夏の思い出」第2弾です。
今回は8月19日に開催された小・中学生のためのコンクールの報告です。
審査員の一人を務めた坂本正彦がコンクールの感想をまとめました。
このコンクールの初回当時を振り返りながら邦楽界の未来であるこども達へメッセージを送ります。

~二人の天才少年の出現で一躍注目を集めた
   第17回全国小・中学筝曲コンクール in 宇部~

山口県中央部にある人口わずか6千の町、楠町が町興しとして始めた琴コンクール第1回目は、当時人面魚で話題となったお寺の境内で行なわれた。
ほぼ全員が譜面を前にしての演奏で、風が吹くと慌てて関係者が吹き飛んだ譜面を追いかけるシーンが続出する等、子供らしく楽しい雰囲気でのコンクールとして始まった。
最初の頃の参加者は、ほぼ県内に限られたいたものが、回を重ねる毎に西日本一帯に広がり、10回越える頃には関東からの参加者が加わる事となり、文字通り全国でも有数のコンクールとして定着している。
その結果近年では参加者全員が暗譜となり、演奏レベルが飛躍的に向上した。
 そして昨年二人の英才がコンクールに参加することにより、この宇部のコンクールが衝撃的な印象を与えるものとなった。
その一人は、岐阜の佐竹祐磨君で宮城道雄の「線香花火」を演奏。
その繊細で高級感溢れる音色は聴衆を魅了した。
特に線香花火がパッっと弾けて美しい光の光の花を見せる様の表現は秀逸で、正直これは子供で表現できる技術を超えていると思った程である。
この曲は目が見えない人が聴覚で描いた作品で、その聴覚で描いた線香花火の美しい印象を見事に琴で表現した才能は、並みの才能では無い。
もう一人は東京の金子展寛君で、古曲「千鳥の曲」を演奏。
前者の佐竹君が小柄で痩身なのに対し、金子君はとても小学6年生とは思えないほど大柄で、もう大人の雰囲気を感じさせる風格がある少年であった。
「千鳥の曲」が始まると聴衆は強く惹き付けられた。
骨格の大きな演奏であり、しかも品格のある見事な演奏であった。
審査員一同どちらを1位にするか激論となったが、「線香花火」の佐竹君の感性の素晴らしさの方を推して、佐竹君の「最優秀賞」が決定し、金子君は2位に甘んじるという結果となった。
 今年もこの二人は、宇部のコンクールに出場してきた。
今年は共に中学1年生として。
佐竹君は宮城道雄作曲「水の変態」、金子君は古曲「五段砧」と堂々とした選曲で。
従来このコンクールは、筑紫歌都子作曲「雪の幻想」「幻を追うて」、沢井忠夫作曲「鳥のように」、そして吉崎克彦作曲「風に聞け」を上位入賞者が選曲するというのが定番となっていた。
子供でもしっかりと練習すれば、その子供の感性を引き出しやすい曲という理由からであった。
従って「宮城曲」や「古典」では、子供達の感性を引き出すのはまだ難しいとの観測が定着していた。
その予測をこの二人は敢然と打ち破ろうとしているし、現に昨年完全に打ち破った。
 さて、今年の結果であるが、佐竹君は出だしの唄でつまづき、最後まで彼の実力を発揮出来ないまま終わった。
しかし彼の非凡な才能は随所に感じられた。
一方金子君の「五段砧」は見事な演奏で「シャン」という合わせ爪の美しく豊かな響きだけでも彼の豊かな才能を感じさせるもので、今回中学生の部の最優秀賞は文句無く、金子君で決定した。
結果はともあれ、この二人は間違い無く良きライバルとして頭角を現し、将来筝曲界を背負う存在となる逸材である事は紛れも無い事実である。
来年も又この二人が参加して、コンクールが一層の盛り上がりを見せると共に、子供達の演奏技術と音楽感性のレベルが更に高まっていく事を期待してやまない。
 最後にこのコンクールでは、もう一つ注目すべき曲があり、それは小学生の部の最優秀賞を受賞した「飛蝗~飛べバッタ」で、演奏したのは岡山の小学5年の佐竹真生子さんで、彼女は3年前から自ら作詞・作曲した曲で挑戦している。
昨年までは演奏、表現力ともに幼さが感じらたが、今年は自ら作曲した者だけが見せる自信と表現力が桁違いに大きくなって、聴衆を引き付ける魅力を持つ様になっていた。
演奏技術が格段に上達した事も最優秀賞に決定した大きな理由で有る事は言うまでも無い。
小学生が自作品でコンクールに参加する事自体、過去に殆ど例が無いことで、ましてや最優秀賞を受賞する等有り得ない事である。
彼女が今後どの様な作曲をし、どの様な演奏を聞かせてくれるかも、この宇部のコンクールの楽しみの一つである。
何れにしても来年のコンクール開催が早くも待ち望まれる次第である。
                                    (記) 坂本正彦

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【コンクール概要】
琴と書道のコンクール 第17回全国小・中学生筝曲コンクール in 宇部

日程:2007年8月19日
場所:山口県宇部市総合センター
受賞者:
   小学生の部 
   最優秀賞(山口県知事賞)=佐竹真生子(小5)「飛蝗~飛べバッタ」
   優秀賞(宇部市教育長賞)=村上茉比路(小6)「風にきけPartⅡ」
   優秀賞(宇部市長賞)=片山美咲(小6)「雪の幻想」
優良賞= 山本夏子(小3)「よろこび」
          苧玉侑花(小5)「祭りの太鼓」
          善家萌(小5)「衛兵の交替」
      木下彩理(小6)「幻を追うて」
  
   中学生の部
   最優秀賞(山口県知事賞)=金子展寛(中1)「五段砧」
   優秀賞(宇部市教育長賞)=田中華鈴(中1)「せせらぎ」
   優秀賞(宇部市長賞)=玉重智基(中1)「プリズム」
   優良賞=佐竹祐磨(中1)「水の変態」
         前村琴恵(中1)「祭りの太鼓」
         井手佐秀(中2)「綺羅」
        岩田里奈(中2)「鳥のように」
           
                         2007.9.18 by K


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