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第18回全国小・中学生筝曲コンクール in 宇部 [コンクール情報]

皆様こんにちは。
朝晩が涼しくなり秋の気配を感じる今日この頃、いかがお過ごしですか。
本日は先月行われた筝曲コンクールの結果と審査感想文をお届けします。

<第18回全国小・中学生筝曲コンクール in 宇部>
日時:平成20年8月24日(日)
会場:宇部市楠総合センター
審査員:佐藤義久・沢井比可流・坂本正彦・田村洋 (敬称略)

最優秀賞・山口県知事賞
<小学生の部>佐竹真生子 (岡山県)
<中学生の部>金子展寛 (東京都)
優秀賞・宇部市長賞
<小学生の部>苧玉侑花 (兵庫県)
<中学生の部>上田麻里名 (愛知県)
優秀賞・宇部市教育長賞
<小学生の部>小林令奈 (千葉県)
<中学生の部>高橋由貴 (大阪府)

以下は4名の審査員の一人であった坂本正彦氏が今回のコンクール審査で感じた感想文です。

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~もう一人の天才少女の出現で更に注目を浴びた~
 第18回全国小・中学生筝曲コンクール in 宇部

 第10回迄は20人前後の参加者に過ぎなかったこのコンクールも年々増加し、今回は43人という空前の参加者を迎えた。
しかも大変レベルの高いもので、今や小・中学生筝曲コンクールとして最も優秀な人材が全国から集まって来たと言える程の素晴らしいコンクールとなった。
 今回最も注目を浴びたのは、小学生の部で昨年に続き最優秀賞を受賞した、佐竹真生子さんである。
佐竹さんは小学3年生頃から自作の曲で参加していたが、昨年よりその独創性が一段と輝きだし、その才能の片鱗が開花し始めていた。
今年も「舞花」と云う自作品で挑戦し、衣装、小道具まで完璧に準備して、曲の雰囲気を堂々と表現してくれた。
しかも彼女の演奏技術も飛躍的に向上していた。
作品自体の音楽的評価は別にして、独創性と表現力には非凡な才能を感じさせるものが有る。
筝の世界にも当然視覚的要素が強く求められる時代が来ている所から、彼女の存在はこれからの筝曲界に新しい方向を拡げて行く可能性がある。
ただ、次回は既成の名曲を彼女がどの様な感性で演奏するかを聞いてみたい。
 次に小学生の部2位の「宇部市長賞」に選ばれた、苧玉侑花さんは「手事」の「第一楽章」を切れの良いタッチと見事な流れで、この名曲を弾ききったのは圧巻で、審査員の中にはこの「手事」を1位に採点する方も居た。
ただ個人的には、宮城曲のエッセンスである切れと繊細な表現の、繊細さをもう少し大切にして欲しかった。
3位の小林令奈さんの「幻を追うて」も筑紫曲特有の多彩な音色感と間を大切にした表現力も素晴らしい感性が感じられた。
この上位3者はいずれが1位に選ばれても異論が無い程の激戦で、今回の音楽的レベルの高さを示すもので有った。
 二人の天才少年で話題になった中学生の部は、今回も圧倒的評価で金子展寛君の「乱」の演奏が最優秀賞「山口県知事賞」に選ばれた。
彼の舞台を圧する重厚な演奏力は、もはや少年の物では無い。
間違い無く筝曲界の将来の逸材である。
音の重心がしっかりと低く、直線と曲線で進む曲の流れは舞に似て日本の伝統的流れの美しさを具現している。
惜しむらくは、「乱」の重要な表現ポイントとなる、余韻の響きが少し薄かったのが気になった。
しかし何れにしても才能豊かな素晴らしい逸材である。
2位に輝いた上田麻里名さんは、牧野由多可作曲の「十七絃独奏による主題と変容 風」を演奏。
この難解で内面的感性を強く求められる名曲「風」を彼女なりの感性で見事に表現しきったのには敬服した。
何よりもこの曲を大きくナチュラルな形で表現出来ているのが良い。
上田さんの感性の豊かさを感じる。
一方もう一人の天才少年、佐竹祐磨君は前年は「水の変態」今回は「瀬音」に挑戦。
しかし平凡な演奏に終始した。
あの「線香花火」で見せた繊細で煌く感性は何処に消えたのでしょうか。
きっと手が早いフレーズを上下のリズム感で処理した為、リズムの底に潜む、繊細で暖かい世界が見えなくなったのかも知れない。
まず音の重心を低くして、摺足のリズムを習得すべきかも知れない。
そうすると流れの下の繊細な景色が見え始めるに違い無い。
佐竹祐磨君は素晴らしい才能を持っているはずだから。
                                                             (坂本正彦)

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